インドの南端、タミルナドゥ州にあるクダンクラム原子力発電所で、629日から5号機(100kW級のロシア型PWR:「VVER-1000」、出力105kW)の建設工事が正式に始まった。同機の原子炉建屋の基盤部に最初のコンクリートが打設されたもので、インド原子力発電公社(NPCIL)は約66か月後の完成を予定している。

NPCILの発表によると、この日現地では、同発電所のⅢ期工事にあたる56号機の起工式が行われた。新型コロナウイルスによる感染拡大防止の観点から、インド原子力委員会の会長を兼ねるK.N.ヴィアス原子力相がテレビ会議を通じて5号機の着工を宣言。NPCILS.K.シャルマ会長や、同発電所の建設工事を請け負ったロシア国営原子力総合企業ロスアトム社のA.リハチョフ総裁などが参加した。

インドで稼働する商業炉は、出力が最大でも70kWという国産加圧重水炉(PHWR)が中心で、クダンクラム原子力発電所Ⅰ期工事の12号機(VVER-1000、出力各100kW)はインドで初めて建設された大型の軽水炉である。これらはそれぞれ201412月と20173月から営業運転を続けており、後続のⅡ期工事である34号機(VVER-1000、出力各100kW)は2017年の6月と10月から建設工事中。現在の進捗率は約50%となっている。

56号機の増設計画については、20176月にインドとロシア両国の政府が一般枠組協定(GFA)と政府間信用議定書に調印、同年8月には主要機器の調達が開始された。6基すべてが完成すれば、同発電所はベースロード電源として約600kWのクリーン電力をインド全土に供給することになる。また、インド原子力省(DAE)とロスアトム社は201810月、インドの新規立地点で新たにVVER6基建設する計画を公表している。

ロスアトム社のリハチョフ総裁は5号機の着工に際し、「クダンクラム発電所の建設プロジェクトはインドとロシアの長年にわたる緊密な協力関係のシンボルだ」とコメント。その上で、「我々はここで歩みを止めるつもりはないし、両国の合意文書にも記したように、インドのパートナーとともに第3世代+(プラス)の最新鋭VVERを新規立地点でシリーズ建設していく」と述べた。ロスアトム社によると、原子炉設備やタービン建屋など、クダンクラム5号機で最優先に設置する機器類は、すでにロシアの関連企業が製造を開始。今後2年間の作業に関わる詳細な設計書類は完成済みだとしている。

(参照資料:NPCIL、ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA629日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)