ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は10月30日、鉛冷却高速炉のパイロット実証炉「BREST-300」建設計画を含めた国家プログラム案「原子力科学とエンジニアリング、および技術の開発」について、2024年までの予算2,000億ルーブル(約3,446億円)を連邦政府に申請中であることを明らかにした。
 出力30万kWの「BREST-300」や専用の燃料製造プラントなどを建設することは、鉛冷却高速炉をナトリウム冷却高速炉と並行して研究開発するという「ブレークスルー・プロジェクト」の一部。建設ロードマップは昨年、調整を加える方向で決定しており、燃料プラントの着工を2021年とした上で、2023年から「BREST-300」のために窒化物燃料の製造を開始するとした。「BREST-300」自体の運転は2026年に始める計画で、専用の使用済燃料再処理プラントは2028年までに必要になるとしている。

 ロシアでは、国内のエネルギー需要を満たすとともに、天然ウランと使用済燃料を有効活用できるような核燃料サイクルを確立するため、高速中性子炉の実用化を進めている。すでに、電気出力1.2万kWの高速実験炉がディミトロフグラードで稼働中のほか、ナトリウム冷却方式の60万kWの原型炉(BN-600)と80万kWの実証炉(BN-800)がベロヤルスク原子力発電所で稼働中である。
 2011年に始まった「ブレークスルー・プロジェクト」でロスアトム社は、「BREST-300」に続いて、120万kWの商業用・鉛冷却高速炉を建設することも検討中。この計画については、トムスク州の知事が近年、プロジェクトを州内のセベルスクに誘致するため、提案書をロスアトム社傘下の燃料製造企業TVEL社に送付したとしている。

 ロスアトム社が着手した国家プログラムでは、原子力発電を最終的に、熱中性子炉と高速炉がセットで稼働するという「2つの要素で構成されるシステム」に移行させる方針。高速炉で生み出された余剰プルトニウムを熱中性子炉用の燃料として再利用するなど、濃縮ウランの有効活用と核拡散リスクの軽減を狙っている。
 同プログラムは現在、連邦政府の複数の執行機関が調整しているが、ロスアトム社は「2つの要素で構成されるシステム」への移行を、「ブレークスルー・プロジェクト」枠内の国際協力で進めることを計画中。また、出力120万kWの商業用・ナトリウム冷却高速炉(BN-1200)の建設計画についても、同プロジェクトの枠内で経営主体の決定イニシアチブを開始したことを明らかにした。

 (参照資料:ロスアトム社の週刊メディア「ストラナ・ロスアトム」、原産新聞・海外ニュース、ほか)