ロスアトムは、COP28気候会議の場において、「小型原発の日」を開催し、気候目標を達成し、低炭素未来を確保するための様々な技術的ソリューションを紹介した。「小型原発の日」は、ドバイ万博跡地で国営企業ロスアトムの支援で実現した。
「原子力発電は、間違いなく、私たち皆が目指すカーボンニュートラルの基盤になると確信しています。そして、小型原子力発電は、信頼できる技術的解決策の一つとして、将来の原子力発電産業において正当な地位を確立するはずです。小型原発の分野におけるロスアトムの提案は、さまざまな理由でかつて原子力発電を検討しなかった国々にとって、効果的で環境にやさしい選択肢になると確信しています」。国営原子力企業ロスアトムのアレクセイ・リハチョフ総裁は、小型原発の日の来賓と参加者に向けた動画メッセージの中でこう述べた。  
このイベントは、ロスアトムが小型原発のユニークなプロジェクトを立ち上げたサハ共和国を舞台に、この地で人間と自然との調和を守る重要性を伝える、鮮やかなマルチメディア・ショーで幕を開けた。サハ共和国の発電所は、北極圏の壊れやすい生態系に配慮しながら建設された。そのことが地活性化のきっかけとなることが期待されている。サハ共和国の陸上小型原発は2028年までの稼働が予定されている。ロスアトムの事業ポートフォリオでは、このプロジェクトのほか、世界唯一の海上浮体式原子力発電所であるアカデミック・ロモノソフが注目される。2019年末の商業運転開始以来、この浮体式原子力発電所はロシア最北都市ペヴェクのために7億kWh以上の電力を供給してきた。この経験に基づき、RITM-200型原子炉をベースにした新世代の浮体式発電ユニットの技術開発が進められている。2029年までに、チュクチ自治管区のバイムスカヤ鉱床開発用のエネルギー供給を開始する予定である。ロスアトムは、最大10MWのマイクロリアクター「Shelf-M」のプロジェクトも進めている。この技術による最初の発電所は2030年までに日の目を見る予定である。
「世界には、設計段階にある小型モジュール炉のプロジェクトが70以上あるなかで、ロスアトムは、言葉から行動に移した唯一のテクノロジー事業者です。今日、サハ共和国とチュクチ自治管区のそれぞれのプロジェクトを実施するにあたり、私たちは、小型原発の経済性と信頼性を実証することを課題に据えています。第三世代+(プラス)原子炉VVER-1200をベースとするロシアの原子力発電所のリファレンスによって、原子力発電が気候変動に対する安全な解決策であることを世界に示せたように、極東のリファレンスの確立は、この技術にとって巨大な市場を開くことにつながるでしょう」。ロスアトム第一副所長兼開発・国際事業部長のキリル・コマロフはそのようにスピーチし、「私たちは、この数年間で得られる経験によって、世界のパートナーに小型原発分野での最高のソリューションを提供できると確信しています」と述べた。

小型原発の日のパネルディスカッションでは、世界原子力協会(WNA)のサマ・ビルバオ・イ・レオン事務局長や、関係省庁の代表者、各国のエネルギー企業も登壇した。パネリストたちは、小規模原子力発電が国の開発課題にいかに幅広く対処できるかについて語った。
小型原発の日の最後に、ロスアトムの経営陣は、モンゴル国営企業モンアトムのダライジャルガル・ドルジダバル常務取締役に、モンゴル小型原発建設のコンセプトを贈呈した。この式典は、ロスアトムの海外パートナーとの協力関係の発展を示すものであり、国際エネルギー市場における小型原子炉技術の需要を裏付けた。

参考情報
国連気候変動枠組条約の交渉会議COPは、気候変動問題を扱う最大の会議であり、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、京都議定書(KP)、パリ協定(PA)の条項を実施する、交渉プロセスの最高意思決定機関でもある。
ロスアトムは持続可能な開発を念頭に長年にわたって事業を展開してきた。持続可能な開発の原則は、ロスアトムの長期戦略に組み込まれている。2020年、持続可能な開発に関する統一産業政策が採択された。同年10月、ロスアトムは、企業の社会的責任と持続可能な開発の分野におけるビジネス最大の国際的イニシアティブである国連グローバル・コンパクトに参加した。ロスアトムはロシア最大の低炭素電力生産企業であり、ロシア国内の総発電量の約20%を占めている。



小型原発は原子力産業で最も将来性のある分野のひとつであり、全ての主要企業が、小型モジュール炉技術に基づいた独自のソリューションの開発を進めている。それらの方向性は、いずれも遠隔地や島嶼地域へクリーンな電力と熱を安定して供給することと、将来性のある生産地域の開発を支援することである。ロスアトムは、海上および陸上での小型発電所建設のためのリファレンス技術を持っている。ロスアトムの低電力プロジェクトでは、消費者に長期的に予測可能な料金で信頼できる電力を提供することができる。そのため、小型原発技術は、生産施設や事業地域の電力供給源の選択に責任あるアプローチをとる大規模な産業消費者に需要があると言える。

浮体式発電設備は、遠隔地への電力供給や、採鉱のための大規模投資プロジェクト、エネルギー集約型産業施設などの問題に対して効果のある新たな解決策である。現在、ロスアトムで、大規模な産業クラスターに対して、環境に優しい電力供給のための新しい連続プロジェクトが進められており、バイムスカヤ鉱床では4基の浮体式発電ユニットが建設中である。

浮体式原子力火力発電所(チュコトカ自治管区ペヴェク市)は、世界で唯一稼働中の小容量の浮体式原子力発電所であり、世界最北の原子力火力発電所である。ロシアの辺境地域での持続可能な開発事業の分野にとって、その2020年5月の運転開始は、大きな突破口となった。浮体式原子力発電所は、2基のKLT-40S原子炉ユニットを備えたアカデミク・ロモノソフ浮体式発電ユニット(FPU)と、FPUから消費者に熱と電力を供給するための陸上インフラからなる。浮体式原子力発電所は発電のほか、ペヴェク市へ熱を供給している。
最初の陸上小型原子力発電所は、サハ共和国ウスチ・ヤンスキー地区に誕生する。この施設から、キュチュス鉱床開発企業を含む産業企業に電力が供給される。原子炉ユニットは、原子力砕氷船プロジェクト22220用に設計された船舶用原子炉RITM-200をベースに開発される。RITM-200Nの熱容量は190MW、電気容量は55MWである。RITM-200Nは、大容量の原子力発電所と比べ、コンパクトでモジュール化されており、建設コストが低いことが特徴である。小型原発の計画耐用年数は最長60年で、6年ごとに燃料を再装填する。運転開始は2028年の予定である。


ロシアでは、環境保護を目的とした新技術の開発と導入にますます注目が集まっている。ロスアトムは低炭素発電で電力を生産する企業である以上、グリーン経済への歩みを確実に進めている。自然への悪影響を減らし、生物資源を保護し、補充する。これらすべてが、ロシアの原子力産業における優先的な環境保護課題である。原子力産業は、環境に優しいエネルギーの生成を保証する設備の近代化に細心の注意を払っており、環境保護対策に毎年数億ルーブルが費やされている。ロスアトムは、森林再生、河川堤防の清掃、水域の放流に取り組むなど、地球の生物の多様性を守るための様々なプロジェクトに参加している。原子力発電は、発電時にCO2を排出しないため、気候変動の問題解決に貢献できる。これは多くの国にとって非常に重要である。



ロシアは友好国との協業を積極的に進めている。対外的な制約にもかかわらず、国内経済は輸出の可能性が高まっており、世界中に商品、サービス、原材料を供給している。大規模な海外エネルギー・プロジェクトも引き続き実施されている。ロスアトム社とその担当部門は、この仕事に意欲的に取り組んでいる。