ロスアトム国営公社の同位体製品の流通・販売促進のインテグレーターである株式会社アイソトープ全地域協同組合は、ジルコニウム同位体Zr-96のユニークなサンプルをドゥブナ合同原子核研究所(JINR)に納品した。株式会社電気化学工場生産協同組合(ロスアトム企業)の施設で生産された同位体Zr-96は、物理学に関する実験室内研究、特にニュートリノ素粒子に関する研究に採用されていく。

アイソトープ全地域協同組合のマキシム・クシュナレフCEO(最高経営責任者)は、「この度の納品は、株式会社電気化学工場生産協同組合さんとJINRさんと弊社間の有意義な協力の成果です。この連携が、宇宙の物理的性質の研究分野における国際的な科学実験に役立ち、重要な新発見につながることを期待しています」と指摘した。

JINR核問題試験室核分光分析・放射化学部のエフゲニー・ヤクシェフ部長は、研究課題について次のように述べた。「アイソトープ全地域協同組合さんとの連携により、ユニークな濃縮Zr-96のサンプルが得られ、この同位体の二重ベータ崩壊のニュートリノモードと新しい感度レベルにおけるニュートリノなしモードの探索を目指す新しい研究を可能にします。二重ベータ崩壊のニュートリノ・モードの分光学的探索は、原子核物理学と天体物理と宇宙論とを結びつけるものです。このような崩壊様式の存在は、物質と反物質の間のわずかな非対称性によって可能となった我々の宇宙の存在そのものに光を当てることができるようにします。この非対称性を解釈する多くの理論モデルは,別の機構であるマヨラナ的ニュートリノ質量獲得機構を必要としますが,それこそニュートリノなしの崩壊が可能にします。このニュートリノ機構は、質量がヒッグス場との相互作用によって生じることが知られている他のすべての粒子とは根本的に異なる可能性があります。これは全く新しくて非常に面白いな物理学です」。    

JINR核問題試験室放射化学部門のドミトリー・フィロソフォフ部門長は「JINRは二重ベータ崩壊の実験の開発・実施に関して長い歴史を持っています。研究には、アイソトープ全地域協同組合さんが手を貸してくれている濃縮同位体だけでなく、あらゆる不純物に対するそのユニークな純度も必要です。JINR核問題研究所(JINR LNP)では、これらの不純物の測定方法や濃縮された物質の特性、必要な追加精製を研究していく予定です」と付加えた。

JINRは近い未来、納品された同位体サンプルの純度を調査し、その結果を公表する予定。Zr-96の高品質が確認されれば、様々な国際的な科学プロジェクトで需要が見込まれ、見込み販売量は年間数十キロになり得る。

株式会社電気化学工場生産協同組合のセルゲイ・カラウロフ非原子力事業開発担当副社長は、「ジルコニウム同位体製造会社のモットーとしては、「達成したことに立ち止まらない」ことが挙げられます。このように、弊社の同位体製品ラインアップには、ジルコニウムという新しい同位体が追加されました。この同位体は、弊社の同位体濃縮の能力範囲内にある、メンデレーエフの周期表の22番目もの元素です。これは、弊社の生産部門・営業部門と産業インテグレーターであるアイソトープ全地域協同組合さんとの連携と効率的な業務により実現できたことです」と強調した。 

参考:

株式会社アイソトープ全地域協同組合は、国際市場におけるロスアトム国営公社同位体部門の公式サ仕入先であり、国内市場における同製品の主要仕入先でもある。創業は1958年。同社は現在、世界50カ国に所在する100社以上の外国企業と、ロシア国内の医療機関や産業企業、科学団体を含む約600団体が同社のパートナーである。www.isotop.ru

JINRは、ロシアにおける唯一の国際的な政府間科学機関である。1956年に設立されたこの研究所は、モスクワ地方ドゥブナ町にある。この科学センターには18ヵ国・地域が加盟している。JINRでは、素粒子物理学や原子核物理学、物性物理学を主な研究分野として、理論的かつ実験的な研究を実施している。過去10年間にメンデレーフの周期表の10の元素がJINRで発見され、NICAメガシグネチャーコライダーがJINRで建設されているほか、JINRBAIKAL-GVDプロジェクトを成すバイカルニュートリノ望遠鏡の開発における国際科学協力の主要機関の1つでもある。www.jinr.ru