トルコ初の原子力発電所となるアックユ発電所(120kWのロシア型PWR×4基)を建設中のアックユ原子力発電会社(ANPP)は721日、建設サイトで4号機を本格着工したと発表した。
同炉の原子炉建屋が建つ基盤部分に最初のコンクリートを打設したもので、ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社のトルコ子会社であるANPP社は、「これにより4号機の作業は主要な建設段階に入った」と宣言している。
ANPP社は20205月に4号機の建設許可をトルコ原子力規制庁(NDK)に申請。NDKは約1年後の20216月、同炉の「部分的建設許可(LWP)」を同社に発給した。このLWPの下で、同社はこれまでにサイトの工事測量や排水作業と防水工事、ピットの掘削、原子炉建屋とタービン建屋のベースマット下部に敷くコンクリート・パッド等の準備作業を実施。202110月にNDKから同炉の建設許可を取得した後は、今年5月にタービン建屋の基礎プレート部分にコンクリートを打設している。
また、ロスアトム社の同日付発表によると、同社の機器製造部門アトムエネルゴマシ(AEM)社の一部であるAEMテクノロジー社(ボルゴドンスク支部)が、4号機で使用する原子炉容器の底部を製造した。
アックユ原子力発電所建設プロジェクトは、20105月にトルコとロシアが結んだ政府間協力協定(IGA)に基づいて進められており、第3世代+(プラス)の120kW級ロシア型PWRVVER-1200)を地中海沿岸のメルシン県に4基建設する。約200億ドルと言われる総工費は差し当たりロシア側が全額負担するが、返済のため、発電所の完成後にトルコ電力卸売会社(TETAS)がANPP社から固定価格で15年間電力を購入する予定。発電所の設計・建設から運転、保守点検、廃止措置まで、ANPP社が実施することを約束するなど、原子力分野で「建設・所有・運転(BOO)」方式を採用した世界でも初の事例となっている。
4号機の本格着工にともない建設サイトでは記念式典が開催され、同国エネルギー・天然資源省(ETKB)のF.ドンメズ大臣や地元メルシン県のA.H.ペリバン知事、ロスアトム社のA.リハチョフ総裁、ANPP社のA.ゾテエバCEOなどが出席した。
ドンメズ大臣は「アックユ発電所の建設はトルコでも最大規模の投資プロジェクトであり、完成すれば我が国の電力需要の約10%を賄う」と説明。同発電所はこのほか、クリーンエネルギー開発の目標達成にも貢献すると述べ、「年間3,500万トンのCO2排出が抑えられることから、同発電所が稼働する60年間に抑制される排出量の合計は21億トンにのぼる」と指摘した。
ANPP社の発表によると、同発電所で最も早い20184月に着工した1号機では、コアキャッチャーや原子炉容器、蒸気発生器、主蒸気ポンプの据え付けが完了した。主循環パイプラインの溶接作業も終了し、格納容器では内張りの5層目が施されている。また、20204月に建設工事が本格化した2号機では、コアキャッチャーの据え付けが終わり、格納容器内張りの3層目を組み込む作業が行われた。3号機の建設工事は20213月に本格的に開始され、原子炉建屋とタービン建屋で基礎階の補強作業が完了、コアキャッチャーも設置済みとなっている。
また、これらの作業には数100社のトルコ企業が参加し、資機材や関連サービスを提供、受注総額はすでに30億ドルを超えた。同プロジェクトはまた、地元地域のインフラ開発や雇用の創出にも貢献しており、ANPP社は建設サイトで働く作業員約25千人のうち、約8割がトルコ国民だと強調している。
(参照資料:ANPP社、ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA721日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)