エジプトの原子力規制放射線当局(ENRRA)は629日、原子力発電庁(NPPA)に対し、エルダバ原子力発電所1号機の建設許可を発給した。同機はエジプト初の原子力発電所で、ロシアのロスアトム社が建設している。

エルダバ発電所の建設サイトは首都カイロの北西300 km、地中海沿岸のエルダバ市内にあり、第3世代+(プラス)の最新鋭の120kW級ロシア型PWRVVER-1200)を4基建設することになっている。エジプト電気再生エネルギー省の下でこの計画を担当するNPPAは、20216月にENRRAに対し12号機(各120kW)の建設許可を申請、同年12月には、34号機(各120kW)の建設許可申請書も提出した。これらの動きから、ロスアトム社は20217月に機器の製造を開始。2028年にも1号機の商業運転を開始するとしている。

NPPAA.エルワキル長官は、「原子力発電所の建設は我が国が1950年代から70年以上にわたって切望していたもの。ようやく念願が叶いエジプトはその仲間入りをする」と強い意欲を示している。

建設許可の発給についてロスアトム社は、「申請書の準備では膨大な作業を必要としたが、その甲斐あって1号機では最初のコンクリート打設を含む本格的な建設工事の開始が可能になった」と表明した。同社のA.リハチョフ総裁はVVER-1200について、「世界で最も厳しい安全基準を満たした信頼性の高い設計であり、ロシア国内ではすでに4基が稼働中だ」と説明。エルダバ原子力発電所はアフリカ大陸で建設される最初の第3世代+プラントとなることから、「エジプトはこの地域で技術面のリーダーシップを握ることになる」と指摘している。

ロスアトム社によると、VVER-1200はロシアのノボボロネジ原子力発電所Ⅱ期工事、およびレニングラード発電所Ⅱ期工事で採用されており、両発電所ではすでに20172月から20213月にかけて、2基ずつ(各118万~120kW)営業運転を開始。国外ではベラルーシのベラルシアン原子力発電所1号機(119.4kW)が20216月に営業運転を開始したほか、同2号機(119.4kW)も20144月から建設中となっている。

エルダバ原子力発電所の建設については、201511月にエジプトとロシアの両政府が2国間協力協定(IGA)を締結しており、翌20165月にロシア政府は最大250億ドルの低金利融資(年3%)をエジプトに提供するための大統領令を公布。201712月になると、両国政府はエルダバで4基のVVERを建設する内容のパッケージ契約に調印した。

これらの契約に基づき、ロシア側はエジプトで原子力発電所を建設するのに加えて、各原子炉の運転期間である60年分の燃料を供給する。エジプト側の人材育成についても教育訓練を実施するほか、運転開始後10年間は発電所の運転保守(O&M)を支援、使用済燃料の中間貯蔵施設もエジプト国内で建設し、貯蔵用コンテナを提供することになる。

(参照資料:ロスアトム社、NPPA(アラビア語)の発表資料、原産新聞海外ニュース、およびWNA630日付け「ワールドニュークリアニュース(WNN)」)