ハンガリーのパクシュ開発会社は526日、120kWのロシア型PWRVVER×2基で構成されるパクシュ原子力発電所期工事の建設に向けて、サイトの掘削前に必要となる「地下水遮断壁」の建設許可を国家原子力庁(HAEA)から取得したと発表した。

既存のパクシュ原子力発電所(50kWVVER×4基)はハンガリー唯一の原子力発電設備であり、同国における総発電量の約50%を供給中だが、これらの原子炉はすでにVVERの公式運転期間である30年が満了した。同発電所を運転する国営MVMグループのMVM社が、4基の運転期間をそれぞれ20年延長する手続を取る一方、同じくMVMグループに所属するパクシュ開発会社は、20206月に期工事の56号機について建設許可をHAEAに申請。HAEAは現在この申請書を審査中である。

パクシュ開発会社の今月19日付けの発表によると、議会の持続可能開発委員会は2023年後半にもパクシュ期工事の着工を目指すと明言しており、この10年の間に2基とも運転開始させる方針である。

原子力発電所のように複雑かつ多くの専門家が関係する施設については、ハンガリーでは関係の様々な許認可を複数の政府当局から取得する必要がある。エネルギー公益企業規制庁(MEKH)はすでに、電力法の義務事項に照らし合わせて発電実施許可を発給。HAEA20173月に、同建設プロジェクトのサイト許可を発給しており、パクシュ開発会社はこれに基づいて、20196月から付属施設の建設といった準備作業を開始している。

地下水遮断壁は、サイトの掘削にともない浸出する地下水を最小限に制御する役割を担っており、既存の4基の運転においても重要となる地下水位を維持。その建設許可が下りたことについて、外務貿易省のP.シーヤールト大臣は「期工事の着工に向けてプロジェクトは大きく前進した」と指摘。「今後数年間はエネルギーの供給危機に陥る可能性もあるが、自らが必要とするエネルギーを自ら生産できる国は万全だ。だからこそ、パクシュ期工事の建設はハンガリーにとって最も重要なのだ」と強調した。

パクシュ期工事の建設については、ハンガリー政府が20141月、総工費の約8割に相当する最大100億ユーロ(約13,800億円)をロシアからの低金利融資で賄うと発表。ロシア国営の原子力総合企業であるロスアトム社の傘下企業とパクシュ開発会社は同年12月、同プロジェクトのEPC(設計調達建設)契約を含む主要な3契約に調印した。ロスアトム社側の今回の発表によると、地下水遮断壁の建設準備として、すでに地盤の改良や隔壁の建設が進められている。

ハンガリー政府内では、J.シューリ無任所大臣が20175月から同プロジェクトの設計から建設、設置まで担当していた。しかし政府は今月19日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻や、これにともなうロシアへの制裁措置問題などを念頭に、同プロジェクトの実施を大幅に加速すると発表、関係責任をすべて外務貿易省に移管した。シューリ無任所大臣も、今後は同省所属の大臣として引き続きパクシュ期工事関係の業務を担当する。シーヤールト外務貿易相は「これら2基のプラントはハンガリーの国家安全保障と経済および戦略的国益に資する」と表明。原子力こそ、最も確実かつ安定的に最安のエネルギーを供給できると強調している。

(参照資料:パクシュ開発会社の発表資料、ロスアトム社の発表資料、原産新聞海外ニュース、およびWNA527日付け「ワールドニュークリアニュースWNN)」)