政府は3日、新たなエネルギー基本計画を閣議決定した。原子力発電所の使用済み核燃料を再処理して出るプルトニウムについて「保有量の削減に取り組む」と初めて明記し、国際社会の懸念に対応する方針を示した。削減には原発での活用がカギになる。再生可能エネルギーを「主力電源」にする目標を掲げる一方、原子力の再稼働を進めていく方針も維持した。

基本計画の改定は14年以来4年ぶり。プルトニウムは11年の東京電力福島第1原発事故以降、原発再稼働が停滞した影響で再利用されずたまり続けている。米国は核不拡散の観点から削減を求めている。

削減に関する文言は素案にはなかったが、国内外に対処方針をより明確にすべきだと主張する外務省などの意見を取り入れた。世耕弘成経済産業相は3日の閣議後の記者会見で、「削減に取り組む趣旨をより明確にしていく」と説明した。日本のプルトニウム管理を担う原子力委員会も、保有量を減らす方針を決める見通しだ。

削減の具体的な方法としては、プルトニウムを通常の原子炉で燃やす「プルサーマル」を一層推進する方針を掲げた。ただ、依然として原発の再稼働のペースが上がらないなかで、どこまで削減を進められるかは不透明な面もある。

30年の電源に占める比率については、原子力発電で2022%、再生可能エネルギーで2224%とする従来の目標を維持した。原発は「可能な限り依存度を低減する」とする一方、「脱炭素化の選択肢」とも位置づけた。

2022%を確保するには30基程度の稼働が必要になる。ただ現時点では9基にとどまり、新増設の見通しも立っていない。基本計画では「原発事故の原点に立ち返った責任感ある真摯な姿勢や取り組みが重要」とした。社会的な信頼を回復できるかが課題となる。

今回の基本計画では新たに50年の長期戦略も盛り込んだ。太陽光や風力などの再生エネについて「経済的に自立し脱炭素化した主力電源化をめざす」と明記した。

導入量を最大限に増やすためには欧州などに比べて割高なコストをどこまで低減できるかが焦点になる。天候などによって出力が不安定になる弱点を補うため、電力を調整する蓄電池などの技術開発も後押しする。

石炭火力発電は安価で供給が安定した「重要なベースロード電源」とした。ただ温暖化ガスの排出量が多いといった国際的な批判が強まっており、非効率な発電設備を順次廃止していくと同時に、活用する石炭火力の高効率化を進める。